新生銀行の外貨定期預金キャンペーン(2020年4〜5月)で儲けた話
少し前の話になるんですが、2020年4月から5月にかけて新生銀行で外貨定期預金の特別金利キャンペーンを実施していました。米ドル1ヶ月定期預金が通常年利5%のところ年利10%というものです。
これが実はローリスクミドルリターンの案件で、実際に儲かったよ、という話を紹介します。
実際の結果
まず結果をお見せします。4月末から5月末にかけて、上記キャンペーンで40000米ドルを預けたときの成績です。
内訳 | 損益 |
---|---|
外貨預金 税引後利息 | 28202円 |
外貨預金 為替損益 | 5365円 |
FX スワップポイント | -930円 |
FX 為替損益 | -12302円 |
合計 | 20335円 |
理屈上、この合計の利益は為替変動の影響を受けません。外貨預金とFXを組み合わせているので、為替の損益は釣り合うようになっているのです。
この取引に必要な資金は480万円でした。これを1ヶ月間運用して利益が約2万円ですから、利回り年6.4%相当になります1。なかなか好条件ですね。
私はこれを1単位として複数セットを運用していたので、この何倍か儲かりました。
以下、私が何をしたのか前提知識から説明していきます。
一般的に銀行の外貨預金は損をする
今回は外貨預金がオトクという話を紹介するんですが、「ちょっと信じられない、外貨預金って銀行の儲けしかない商品でしょ」という方もいらっしゃるかと思います。私も少し前まで銀行の外貨預金はすべてボッタクリだと思っていました。
というのも、銀行の外貨預金はFXに比べると為替手数料が20〜200倍ほどに設定されており、見かけ上の金利が良くても為替手数料でマイナスになってしまうことが多いのです。為替・FXに詳しい人ほど外貨預金なんて眼中にないかもしれませんね。
たとえば楽天銀行の2週間外貨定期預金の例を見てみましょう。
南アランドがなんと年利60%、2週間とはいえ500万円預けたとして利息が約9万円ですから大盤振る舞いに見えます。一方で、為替手数料は約47万円かかるので、預けた時点で7%強の損をしているようなものです。米ドル、豪ドルについても下の表の通り利息より為替手数料の方が高いことがわかります。
内訳 | 米ドル外貨預金 (14日間・年利4%) |
豪ドル外貨預金 (14日間・年利12%) |
南アランド外貨預金 (14日間・年利60%) |
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税引後利息 | 6098円 | 18334円 | 91690円 |
為替手数料 | -23277円 (1米ドルあたり 往復50銭) |
-61041円 (1豪ドルあたり 往復90銭) |
-476190円 (1ランドあたり 往復60銭) |
合計 | -17179円 | -42707円 | -384500円 |
このように、短期間で高金利の外貨預金は為替手数料で負けるものが多いので注意しましょう。今回は楽天銀行を例に挙げましたが、他行の外貨預金キャンペーンも大抵は同じ仕組みになっています。
たまにオトクな外貨預金キャンペーンもある
上で紹介したような前提知識があると、外貨預金のキャンペーンを見ても「あーハイハイまた損する奴でしょ」と決めつけてオトクな案件を逃してしまったりします。
実際、今回の新生銀行のキャンペーンは最近珍しいくらいハッキリしたオトク案件だったんですが、多くの人が見逃していたのではないでしょうか。Twitterでもこれを話題にしている人はほとんどいなかったように思います。
どれくらいオトクだったのか、米ドルを500万円預けたときのシミュレーションをしてみましょう。
内訳 | 米ドル外貨預金 (1ヶ月・年利10%) |
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税引後利息 | 31637円 |
為替手数料 | -13966円 (1米ドルあたり往復30銭) |
合計 | 17671円 |
手数料より利息の方が断然高いですね。米国長期金利が1%を切っているなか、1ヶ月間とはいえ年利5.4%相当2ですから超優秀です。このように銀行さんが身銭を切っている外貨預金キャンペーンもあるのです。
私の場合は新生銀行の優遇プログラムで「新生ゴールド」を獲得しており、為替手数料が往復18銭で済むためさらにオトクだったというわけです。
為替リスクはFXでヘッジできる
オトクな外貨預金が見つかったとしても、全財産をそのまま外貨預金にするのはお勧めしません。というのも、外貨預金では利息より為替差益・差損の方が断然大きくなる傾向があるからです。米ドルであれば1ヶ月で数円値動きがあることも珍しくありません。500万円を米ドル外貨預金にして2円円高になったときの差損は約10万円です。利息なんか簡単に飛んでいきますね。
そこでオススメしたいのが外貨預金とFX取引とを組み合わせることです。FXは信用取引なので売りから入ることができます。これを利用して外貨預金と同額の売りポジションを取れば、為替が上にいっても下にいっても損得が釣り合うというわけです。
実際、私は下記のように新生銀行とDMM FXで同時に同額のポジションを取り、定期預金が満期になったあとで同時に決済しました。おかげで為替が上に行こうが下に行こうが損も得もせず、利息分だけを確実に頂けたというわけです。
金額 | ポジション | 必要資金 | |
---|---|---|---|
新生銀行 外貨定期預金 | 40000ドル | 買 | 約430万円 |
DMM FX | 40000ドル | 売 | 約50万円 (証拠金維持率300%) |
FXに慣れていない方は証拠金をどれくらいにすればいいかが難しいと思います。私の過去の経験からすると米ドルなら300〜400%が適正ラインかなと思います(人によっても基準が違うので難しいところですね)。また、為替が急激に円安ドル高に動いた場合は証拠金維持率が下がりますので、証拠金を追加する余裕も持っておく必要があります。
唯一のリスクは税金
FXで為替リスクもヘッジできてめでたしめでたし…と言いたいところですが、まだ罠があります。税金の心配があるのです。
今回紹介したやり方だと外貨預金とFXどちらかで損をしてどちらかで得をすることになります。外貨預金の方が儲かった場合の為替差益は総合課税の「雑所得」、FXの方が儲かった場合の為替差益は申告分離課税の「先物取引に係る雑所得等」となり、両者は損益通算できません。つまり、得した方だけ税金を取られて損した方は税金は返ってきません。円高にせよ円安にせよ、極端に為替が動いた場合には税金が大きくなって利益が帳消しになる可能性があるのです。
もっとも、他に損益通算できる利益がある場合はリスクを減らせます。たとえば私の場合はもともとFXで利益が出ており、今回FXで損をした分と相殺できますので、外貨預金の差益で税金が増えても釣り合いが取れます3。また、外貨預金で差損が出た場合は雑所得がマイナスになりますので、他の雑所得があれば相殺することもできます。
また、国内FX会社ではなく海外FX会社を使えば雑所得扱いで外貨預金と損益通算できるはずなので、本当はそちらの方がいいのかもしれません。私は海外FXの経験値がないので、今後実験していきたいと思います。
おわりに
外貨預金は損するばかりじゃないよ、というお話を紹介しました。
自分の知識の整理も兼ねて書いてみましたが、かなり複雑な内容ですよね…。わかりにくい部分などあればお知らせください。
ちなみに5月末から6月末にかけて再度同じ外貨定期預金キャンペーンで運用しております。これについては「続・新生銀行の外貨定期預金キャンペーン(2020年4〜5月)で儲けた話」をご覧下さい。